好きになれとは言ってない

 航は遥に前を向かせたまま、遥の首の後ろで、ネックレスを留めた。

 おいおい。
 意外に手慣れてないですか?

 本当に今までこんなことしたことないんですか?

 本当に今まで……

 そのまま航が口づけてきた。

 離れたあとで言う。

「こっちで降りるんじゃなかったな」

「え」

 だが、航はすぐに、今の発言をなかったことにしようとした。

「送ろう」
と言う。

「そうですね」
とまどかさんと一緒に並んで歩き出す。

 もうすぐ家だなあ。

 いつもは、夜道で見たら、ほっとする家の灯りを、今日は寂しく眺めていると、航が、
「お前、一人暮らしはしないのか」
と言ってきた。

「……しません」

 そうか、と言ったきり、黙ってしまう。