好きになれとは言ってない

 二人で覗いてみる。

「もうーっ。
 早くしなさいよーっ。
 貴方っていつもそうなんだからっ。

 ケーッ。

 遅刻するわよっ」

 ……ま、まどかさん。

「斎藤まどかは、毎朝、これを旦那に言ってるのかな」

 ああ、人間の方だが、と航が言う。

 なんだか和むが、このケーッが気になるな、と思っていた。

 まどかさんの雄叫びだと思っていたのだが、今、また、同じ位置に入っていた。

 斎藤まどかさんが、あそこでなにか叫ぶのだろうか。

 ……大変そうだな、結婚生活って、とちょっと思ってしまう。

 会ったこともない女性だが、いろいろ教えられるな、と思っていた。

 まどかさんは、まだグニグニ言ったあと、黙ってしまう。

「遥、ちょっと」
と航が近くの公園に遥を呼ぶ。

 雪でも降りそうな気配だった。

『雪の降る中、外で長々話す男は殴ってやったわ』
といつか朝子が言っていたが、今はまだ、殴る気にはならないな、と思う。