好きになれとは言ってない

「私が課長の世界の中心にならなくていいです。

 私のことをいつも考えてくれなくてもいいです。

 私がいつも課長のことを考えて、課長の側に居ますから。

 大好き……」

 大好きです、と言う前に、唇を塞がれていた。

 離れた航は、遥の右の肩に手を置き、
「お前が言うな。
 俺が言う」
と言う。

 だが、航は遥の肩に片手を置いたまま、黙っていた。

 黙っていた。

 ……いつまでも、黙っていた。

 課長……、寒いです、と思ったとき、いきなり女の声がした。

「もうーっ。
 早くしなさいよーっ。
 貴方っていつもそうなんだからっ。

 ケーッ」

 航の左斜め下から声がしていた。