好きになれとは言ってない

「遥」
「はっ、はい」

 だが、畏まった遥の前で、航はいきなり、
「なんだ、その服は」
と怒り出した。

「……ト、トナカイです」

 遥が買った着ぐるみではなく、真尋がくれたミニスカトナカイを着ていた。

 まさか、トナカイの被り物と、もふもふのついた可愛いミニのワンピースのセットだったとは。

 だから会場に着くまで開けるなと言ったんだな、真尋さん、と思っていると、

「誰がそんなもの着ろと言った。
 可愛いじゃないかっ」
とよくわからないことで怒り出す。

 っていうか、口に出して言ってくるなんて、貴方、既に酒が回ってますか? と思った。

「もっとトナカイらしいトナカイにしろっ」

 いや、だから、私は、トナカイを撃って、毛皮を着ようかと言ったではないですか、大魔王様、と思っていると、真尋が助け舟を出してきた。

 自分の渡した衣装で、揉めているのを見兼ねて来てくれたようだった。


「兄貴。
 嫌だよ、俺。

 もこもこのトナカイに給仕されるとか」

 子供の集まりじゃないんだから、と文句を言う。