好きになれとは言ってない

 航は、男には様子を訊きに話しかけるが、女には話しかけず、自分は参加しているつもりはないようだった。

「ちなみに今、一番人気は小宮さんです」
と優樹菜が言い出した。

「え、なんで?」
と振り向くと、

「遥さんに振られたことが広まったからです」
と言う。

「振られた今がチャンスだ、と言うのと、本気になると意外と真面目らしいということが、みんなに伝わったので、今まで小宮さんは軽いからと避けていた方々にも人気急上昇中です」

 そ、そんなものなのか。

「小宮さんにとっては、遥さんは新たな春を呼んでくる女神さまですね」
と優樹菜は小宮を目で探しながら笑う。

 いや、振って感謝されるとか。

 ありがたいような、みんな、早くその話題は忘れて欲しいような。

 私なら課長に振られたらどうかな、と思う。

 あまり想定したい未来ではないが。

 部長はもう帰ったらしく、航は場内を見渡せる位置から、目を配り、時折、頷いていた。

 大魔王様が、うむ、と頷いておられる……。

 私の仕事はどうでしょうか、大魔王様、と遥は問いたくなった。

 そのとき、こちらに気づいた大魔王様がグラスを手に歩いてこられた。