好きになれとは言ってない

 やれやれ、と真尋が椅子を起こしてくれたので、立ち上がろうとしたとき、ガラスの向こうにその姿が見えた。

 航だ。

 いつから居たのだろう。

 航はなんの感情も感じられない瞳でこちらを見ている。

「……ね、ほんとに来たろ?」
と真尋は言ったが、想定外のようだった。