好きになれとは言ってない

「結婚ってどんなものなのか。
 正直言って、まだピンと来ていないんですけど。

 漠然とした夢物語みたいで。

 でも、結婚しても、物語みたいに、めでたしめでたしでは終わらなくて、その先が大変なんだなっていうのは、おねえちゃんたちを見てるから、よくわかるんです」

 あんな感じの姉だが、どうでもいいことで、隆弘と喧嘩して飛び出してきたり、翔子が寝ない子だったので、軽い育児ノイローゼになってみたり、いろいろとあったのだ。

 隆弘との喧嘩も、はたで聞いてたら、それはおねえちゃんが悪いんじゃ、と思えたのだが。

 いざ、自分がその立場になったら、やっぱり、同じことを思うかもしれないし、と今は思ってみたりもする。

「今でもやっぱりよくわからないけど。

 でも、最近、思うようになったんです。

 結婚って、二人でずっと一緒に居られるってことなんだなって」

 当たり前のことですけど、と遥は言った。

 電車の中に、会社の中に、そして、街の雑踏の中に、いつも無意識のうちに探してしまう航の姿をわざわざ探さなくていい。

 理由をこじつけて人事を覗いてみたり、電車で待ち伏せしてみたりしなくても、一緒に居られる。

 土曜も日曜も。
 この先もずっと――。