好きになれとは言ってない

 だが、他の客も引けてきても、航が来る気配はなかった。

 真尋が後片付けをするのを見ながら、遥は真尋に正直な気持ちを打ち明けることにした。

「嬉しかったです」

 そう言うと、後ろの棚にカップを片付けていた真尋が振り返った。

「真尋さんみたいな方に、あんなこと言っていただけるなんて」

 だが、そこで、真尋は渋い顔をする。

「……いきなりものすごい社交辞令から入ってくると、ああ、ほんとに駄目なんだなってよくわかるよね」

 いっそ、ありがとう、と言う真尋に、いえいえ、ほんとですよ、遥は言った。

「本当に嬉しかったです。
 プロポーズされたのも初めてだったし。

 あ、初めてじゃないですよね。

 この間、お義母様に言われたんでしたね」
と言うと、ようやく真尋は笑った。

「真尋さん。
 私、真尋さんをすごいと思います。

 私はあんな風に口に出して想いを伝えることが、なかなかできないから」

 真尋に結婚してと言われてから、今まで真面目には考えてみなかった、結婚というものについても、考えてみるようになった。