好きになれとは言ってない

「今日、やっぱり、勇気を出して告白しようと思って。
 恥ずかしいから、最初に二人で話したあそこに呼んだんだけど」

 呼んだ?

 引きずり込まれたような、と思ったのだが、まあ、せっかく謝っているのに――

 いや、謝っているかは、甚だ謎だが。

 ――弁解しているのに、話の腰を折っても、と思い、黙って聞いていた。

「久しぶりに間近で顔見たし、密室で二人きりだしってなって。

 ……暴走してしまいました、すみません」

 しょんぼり頭を下げる背の高い小宮の、滅多に見られないつむじを眺める。

 溜息をついた遥は、
「わかりました。
 もう私も忘れますので、小宮さんも忘れてください」
と言って、ひとり、倉庫に入ろうとしたが、小宮はいきなり手首を握ってきた。

「そこはちょっと待って。
 忘れないで」
と言ってくる。

 小宮さん、此処、人が見てるんですけどっ、と遥は慌てて辺りを窺う。

 特に、亜紀が、ひょいと総務から出てこようものなら、恐ろしいことになる。

 案の定、間近を通った、よく見る違う部署のおじさんが、若いね~という顔で笑って見ていった。

 だが、小宮の真剣な顔に、遥は逃げずに彼を見上げる。