好きになれとは言ってない

「あの人がいいってくらいだから、いいのかな、と周りも思うわけよ。

 ほら、誰かがいいって言ったら、そうなのかなと周りも思い、人に取られる前にとか、うっかり思ってしまうじゃない。

 肝心の物はそうでもないのにっ」

 そう力説する亜紀に、
「すみません。
 そろそろ殴ってもよろしいでしょうか……」
と訊いてみた。

「ひとりがいいと言うと、みんながいい気がしてくるの法則よっ」

「なんなんですか、それ」
と言ったそこで、亜紀は溜息をつき、

「いや、今、そう思いたいだけなんだけど」
と言ってくる。

「小宮があんたをいいと思い始めてるのは、課長のせいだってね。

 まあ、あんたは課長で決まりなんだから、諦めることもないのかなとは思うんだけど」
とやはり、小宮が気になっていることを告白したあとで、

「でも、私もよそにも目を向けてみようかなと思って。
 せっかくコンパもあることだしね」
と笑って言う。