好きになれとは言ってない

 



「……あんた、小宮に言い寄られてるわね」

 朝、ロッカーの鏡で身だしなみを整え、よしっ、と行こうとした遥の肩を掴だ、亜紀が低い声で言ってきた。

 以前、給湯室の地縛霊のようだと思ったが、おや、ロッカーにも地縛霊が……と苦笑いして振り返る。

「い、言い寄られてませんよ、誰にも」

 真尋にもあれから会ってはいないし、他に変わったこともない。

 何故、今、小宮さんの話題? と思ったくらいだ。

 最近、不思議に視界に入ってこなくなったし。

「ねえ、あんた、最近、それ以外ににもモテてんじゃない?」
と亜紀が不思議なことを言ってくる。

「は?
 いえ、特に。

 ああ、私ではなく、私の携帯なら、モテていますが。

 みなさん、コンパに出ようと勝手に番号を入れてこられたりするんですよね」

 もう締め切ったはずなんですけどね、と遥は小首を傾げた。

 亜紀は顔を近づけ言ってくる。

「いや、今、モテてるわよ。
 あんたが気づいてないだけよ。

 あんた自身はなにも変わってないのにね。

 あの堅物の新海課長があんたをいいと言い出して」

 ……言ってません。