好きになれとは言ってない

 





 今より、少し前、遥たちが店に来たあとのことだった。

 真尋は洗いあがった皿を棚に戻しながら、遥たちの話に耳を傾けていた。

 どうやら、今度のコンパの話をしているらしい。

 女の子たちはみんな、なにを着ていくかで盛り上がっていたが、遥は、
「どうせ、私は着ぐるみですから」
といじけていた。

 たぶん、こうなるだろうと思っていた。

 シンデレラが私もドレスを着て、パーティに行きたいというように、遥が私も綺麗な服が着たいと言い出すのではないかと。

 王子にドレスを着るなと言われたシンデレラか、とちょっと笑う。

 此処にも来たことのある、大葉、小堺、小宮の話が出ていた。

 全員それなりのイケメンだ。

 彼らの前で、可愛くトナカイ姿で給仕している遥の姿が頭に浮かんだ。

 トナカイ。

 トナカイだから、大丈夫、と思いながら、なにが大丈夫なんだろうな、と自分で思う。