好きになれとは言ってない

「でも、鹿かと思っていたら、イノシシで。
 しかも、撃ってみたら、それは実は、課長だったんですよーっ」

「じゃあ、課長は何処かで撃たれて転がってるんじゃないの?
 リストラした人に報復されて」
と投げやりに言う亜紀に、やめてくださいーっ、と訴えてみたのだが、

「いや、私はあんたの夢より、今、あんたが言ってることの方がわかんないから。
 なに当たり前みたいに、着ぐるみのために鹿を撃つとか言ってんのよ」

 あんた、意外と攻撃的ね、と言われてしまう。

「そもそも、大魔王様だって、人間じゃない。
 たまには寝過ごすでしょ。

 っていうか、あんた、携帯の番号知ってるんでしょ?
 かけてみなさいよ」
と言われ、躊躇していると、

「ええっ?
 まさか、かけたことないとかっ?」
と驚かれた。

「で、でも、今、電車に乗ってらしたりしたら、かけたら、ご迷惑ですし」
とへどもど言っていると、亜紀は腰に手をやり、溜息をついて言う。

「いや、あんた、電話かけるだけで、緊張するとか、中学生?」