好きになれとは言ってない

 この匂いを嗅ぐと、遥を思い出すな、と思う。

 嬉しそうに焼きそばを食べる遥。

 ……の映像から、嬉しそうに焼きそばを食べる遥が、
『美味しいですっ』
と真尋に微笑む遥の映像に頭の中で切り替わる。

 焼きそばが嫌いになりそうだ……。

 おのれ、真尋め、餌付けしおって、と思っていると、
「兄貴はさー。
 此処来て、俺に嫉妬したり、釘さしたりする前にすることあるでしょー」
と忠告じみたことを、ぼそりと言ってくる。

「なんだかんだで、遥ちゃんが今一番好意を抱いているのは兄貴なんだからさ」

 『なんだかんだ』と、『今一番』に限定されたことが気になるが、と思いながらも、この状況で、自分に忠告してくれる弟に感謝もしていた。

「なんで遥なんだ?」
と小さな声で訊いてみる。

 女性ばかりの周りの客に配慮してのことだ。

 あのあと母親と電話で話して、確信した。

 真尋は遥に気があるのだと。