好きになれとは言ってない

「なにしに来たのー?」

 真尋は軽い感じで訊いてきたのだが。

 何故かそれが、
『なにしに来た、帰れ~っ』
に聞こえた。

 遥の妄想癖が移ったのだろうか……。

 それとも、真尋の放つ気配を感じての想像か。

「この間まで、比較的仲の良い兄弟だったと思うんだがな……」

 頬杖をつき、横を向いてぼそりと言うと、
「今も仲いいでしょ。
 どうする? ニンジン」
と嘘くさい笑顔で真尋は訊いてくる。

 焼きそば食べるって言ってねえだろ、と思いながら、
「お前、遥をお袋に紹介したのか」
と訊くと、

「紹介したっていうか、勝手に来たんだよ、あの人」
と真尋は言う。

「たまにフラッと寄るときあるから」
と言ったあとで、ふと気づいたように悪い顔で笑う。

「ねえ、それ、どんな嫉妬の仕方?
 俺が紹介したかったのにとか?」
と言うが、

「キャベツ持って言っても、なんだか格好つかないぞ」
と言ってやった。

「……美味しいよ、このキャベツ」

「じゃあ、焼きそばもらおうか」

 もう作ってる、と真尋が言いったときには、もうソースの焦げるいい匂いがし始めていた。