好きになれとは言ってない

 



 千佐子を父親に引き渡したあと、真尋は、
「じゃ、送ってくよ」
と遥に言った。

 さっき乗ったところについ、乗ろうと、後部座席のドアに手をかけると、
「助手席乗ってよ。
 ひとりで前乗ってると寂しいからさ」
と言われる。

「あ、はい。
 わかりました。

 ありがとうございます。
 お世話になりました」
とご両親に頭を下げると、

「うむ。
 苦しうない」
と千佐子に言われた。

 よくわからない人だ……。

 横で、はいはい、と千佐子の夫が言っている。

 落ち着いた印象で眼鏡をかけていて、背が高くて。

 おや、うちのお父さんと似ている、と気がついた。

 そして、千佐子よりも、父親の方に、航は似ている気がする。

 顔は千佐子だが、雰囲気が。

 お母さんが最初に課長を見たとき、真尋さんより課長の方がいいと言ったので、お父さんと課長に似たとこなんてあるかな、と思ったのだが。

 やっぱり、何処か似ているのかもしれない、とちょっと思った。