好きになれとは言ってない

 



 航を呼ぶ、という千佐子を何故か真尋が振り切り、二人を車で送ってくれた。

「なによ。
 あんた、呑んでなかったの?」
と千佐子が助手席で文句を言っている。

「いや、だって、母さん、絶対べろべろに酔うからさ。
 ましてや、嫁になるかもしれない人と初めて一緒に呑んだわけだし」

「そうか、嫁。
 嫁よね。

 私、姑になるんだわ。

 真尋、見てなさいよ。
 私、おばあちゃんみたいな姑にはならないからねっ」
と言いながら、航の手にも似た大きな熱そうな手で、バンバン真尋の肩を叩く。

「殴らないで運転中っ」
と真尋が訴えていた。

 おばあちゃんみたいな姑にはならないって、なにがあったんですか……と思いながら、聞いていた。

「遥さんっ」

「はっ、はいっ」

「末永くよろしくお願いしますっ」
とまだ酔っている風な千佐子に頭を下げられ、いえ、と頭を下げたあとで、はたと気づいた。