好きになれとは言ってない

 真尋さん、人を眺めているのが好きだと言っていたし、人間が好きなんだろうな。

 課長は、嫌いということはないんだろうけど、仕事の方が好きそうだな。

 ……少なくとも私よりも仕事の方が、と思いながら、また真尋がついでくれたワインを呑んだ。

「でも、女性に興味がないということもないと思いますが」
と遥がもらすと、

「そうよね。
 貴女という人が居るんだものね」
と千佐子は言う。

「いえ、私は課長とはなにも。

 いや……なにもじゃないですけど」
と思い返しながら呟くと、真尋が、

「遥ちゃん、親の前、親の前」
とたしなめる。

「いえ、大丈夫です。
 親御さんの前で話せないほどのことはしていません」

 ちょっとアパートに連れ込まれて、キスされただけです、と思っていたのだが、何故か、千佐子に説教される。

「駄目じゃないの、遥さん。
 こっちから行動起こさないと、あの男はいつまでもぼんやりしてるわよ」