好きになれとは言ってない

 このダイニングバーで、鳥カゴに入ったまどかさんが、ケーッと鳴きながら暴れるところを想像してしまった。

 いや……インコ、ケーッて鳴くんだっけ?

 しゃべるよね、確か、人の言葉を、と思っていると、

「遥さん、どうしたの?」
と千佐子が訊いてくる。

「すみません。
 今、まどかさんって、なにしゃべるんだろうなと思ってました」

「……誰、まどかさんって」
と千佐子は真尋を振り返っている。

「一時期、兄貴が飼ってたインコだよ。

 ごめん。
 遥ちゃんは、時折、頭の中身がよそへ行ってしまう子なんだよ」

 ……なにか可哀想な感じに言われてますが。

 いけませんか? と思う。

 学生時代、みんなが、ひいひい言って、走っていた持久走でも、よそ事を考えているうちに終わってしまうので、然程、苦ではなかったし。

 時折、妄想の翼を広げてみるのも悪くないと思うのだが。

「あらそうなの。
 なんだか航にぴったりなお嬢さんね。

 おめでとう、遥さん」
となにがおめでとうなんだかわからないまま、ワイングラスをグラスで軽くコンとやられた。