好きになれとは言ってない






「貴女、よくあの航と付き合うとこまで話持ってけたわねー」

 ワイングラスを手に、航たちの母、千佐子(ちさこ)が言う。

 近くのダイニングバーに三人で来ていた。

「なんで母さんまでついてくるんだよ」

 嫌そうに言う真尋に、千佐子は、
「なによ。
 あんた、遥さんと二人で来る気だったの?

 っていうか、なに、あの張り紙は。

 それから、航にも電話しなさいよ」
と言って、嫌だと言われていた。

「遥ちゃんが煮詰まってるみたいだから、兄貴の愚痴を聞いてやろうと思ってたんだよ」
と言うと、

「あら、だったら、私が聞くわよ。
 私が産んだ私の子どもの愚痴だもの。

 さ、遥さん。
 愚痴りなさい」
と言い出す。

 ……無理です、お義母さま。

 そういえば、課長の部屋に入ったことのある女は、お義母さま、まどかさん、私、だと課長が言ってたっけ。

 あとこの場に足りないのは、まどかさんだな。