好きになれとは言ってない

 



「遥ちゃん、隠れてっ」
と言われた遥は、は? と言って、後ろを振り返る。

 なんだろう。
 すごい大柄な美人の人が入ってくる。

 あら、とこちらを見た。

 なんとなく頭を下げる。

「あら、真尋。
 新しい彼女?」
と遥の横に荷物を置きながら、大きな声で言ったので、店内の女性客が、みな、こちらを見た。

 ちっ、違いますーっ、と思っていると、
「違うよ。
 この人は兄貴の彼女だよ」
と真尋が言う。

 それも違うっ、と思いながら、慌てて遥は言った。

「ちっ、違いますっ。
 部下ですっ。

 あっ、部下でもないですっ。

 課長のコンパをお手伝いしているだけの、しがない隣りの課のものですっ」

 弾みでそう言ってしまい、

 しまった。
 うちの上司に聞かれたら、なにが、しがないと言われそうだ、と思ったが、問題はそこではなかった。

「コンパ?」
とその女性は意志の強そうな眉をひそめる。

「あのー、遥ちゃん。
 それ、うちの母親……」