好きになれとは言ってない

 



 なんだか莫迦みたいなカップルなのに。

 うらやましいと思ってしまうのは何故だろう。

 そんなことを思いながら、亜紀は二人を見ていた。

 こういう人が相手だと、私だったら、イライラするが、遥にはちょうどいいようだ、と思う。

「はい、じゃあ、課長。
 仕事なすってください」
と亜紀は給湯室の扉を閉めた。

 遥が、あ、と言う。

 まだ大魔王様と話したかったのかと思ったが、そうではなかった。

「そういえば、給湯室のドアは閉めちゃ駄目だって、引き継ぎのときから言われてるんですけど」
と言ってくるので、

「莫迦ね。
 それは私のせいよ」
と亜紀は言った。

「私が此処で、新人の子を泣かせてから閉めてはいけなくなったのよ」
と言うか、泣かせた奴が上司にチクったからだ。

 学校で言うなら、自分ミスしてが叱られたのに、教師に言いつけに言ったようなものだ。

 人前で叱っては悪いかと思い、此処で叱ったのだが、まるで陰でいじめたみたいに言われてしまった。