好きになれとは言ってない

 遥はそんな亜紀をチラリと見て言った。

「もう諦める、も何回か聞きましたが」

「あんた、喧嘩売ってんの?」
と言う亜紀の両腕をおもむろにつかみ、一緒にしゃがませる。

「聞いてください、亜紀さん」

「……あんた、人の話を聞きなさいよ」

 そう言いながらも、一緒に小声になり、しゃがんでくれる。

 いい人だ。

「わ、私、酔って、路上で、課長に、お姫様抱っこでキスしてくださいって言ったらしいんですよーっ」
と泣くと、えーっ、マジでっ!? と亜紀は身を乗り出す。

「いいじゃないの。
 してもらないなさいよっ。

 っていうか、したの?

 あの課長が、路上でっ」

 わかりませんーっ、と顔を覆う遥に、
「莫迦じゃないのっ。
 そんなレアなことっ、覚えときなさいよっ。

 もう一回やってもらいなさいっ」
と言ってくる。

 ええっ!?