好きになれとは言ってない






 遥がとぼとぼと自分のフロアに戻ると、廊下に亜紀が仁王立ちになっていた。

「ちょっと遥。
 給湯室に来なさい」

『亜紀さんに給湯室に来いと言われたら気をつけて』

 入社して総務に配属されたとき、真っ先に言われたセリフだ。

 給湯室で亜紀にネチネチ言われて泣かされたという子は結構居る。

 遥は亜紀の側まで行くと、組んでいる亜紀の腕をぐっとつかんだ。

「亜紀さん、今すぐ給湯室に来てください」

「……は?」

 そのまま戸惑う亜紀を引きずっていく。

 しかし、連れ込んだまま溜息をついていると、
「なんなのよ、あんた。
 っていうか、そうよ」
と本来の目的を思い出したらしい亜紀が言ってきた。

「あんた、このヤカンで殴られるのと、お盆で殴られるのとどっちがいい?」
とヤカンと重そうな木製のお盆を見せてくる。

「私、忠告したわよね。
 小宮にちょっかいかけるなって」