好きになれとは言ってない

 



「お、おはようございます、課長」

 そう挨拶した遥に、航は驚いたようだった。

 遥が先に自分の乗るホームに居て、待っていたからだ。

「どうした」
と問われ、

「いえ。
 金曜日のお詫びをと思って。

 早い電車に来て待ってたんです。

 すみません。
 ありがとうございました」
と遥は深々と頭を下げながら、これ、どうぞ、と最近出来た美味しいと評判の店の洋菓子店の紙袋を差し出すと、

「いらん。
 お前が食え」
と言われる。

「ですよね。
 いやー、ほんとは、さきイカとか駄菓子とかの方がいいんじゃないかと思ったんですが、格好つかないので」
と苦笑いすると、

「なんで、駄菓子だ」
と言う。

「いや、男の人って好きじゃないですか、駄菓子。
 のしイカとかイカフライとか」
と言うと、

「さっき言ったのと微妙に被ってるぞ」

 全部イカじゃないか。

 お前が好きなんじゃないか? と言われた。