好きになれとは言ってない

「古い賀正の古賀です」

 古い画商と聞こえるが。

「はるかはどんな字か、ご存知ですか?」

「心がいつも遥か遠くに飛んでる遥だろ」

「課長」

「なんだ」

「殴ります」

「背負われてる分際でか」
と言ったあとで、迷いながらも、

「背負ったのは失敗だったな」
と言ってみた。

「なんでですか?」

 酔っているから、明日には覚えていないか、と思い、思ってるままを口にした。

「キスできないじゃないか」

 すぐに返ってきた、
「そうなんですかー」
という適当な相槌に苦笑する。

 やっぱり、ちゃんと聞いてないな、と思いながら。

 まだ爆発してはいない星を見上げていると、遥が後ろから言ってきた。

「あ、そうだ、課長。
 お姫様抱っこならできますよ」

「……お前、俺に路上でやれと言うのか」

 お姫様抱っこでキスをか?

 小宮とかならやりそうだが、と思う。

 遥は深い考えもなく、本当に、ただ思いついたから言ってみたようだった。