好きになれとは言ってない






 航に連れられ、遥は駅から然程離れていない、夜景の綺麗なダイニングバーに行っていた。

 眺めも内装も素晴らしいし、料理もお酒もメニューが豊富だ。

 素敵だが、ちょっと不安だ、と思う。

 大魔王様は、意外に良い店をご存知です。

 ……誰と来ているのでしょうか、と思いながら、グラスに口をつけつつ、ちらと窺うと、
「大葉とかと来るんだ」
と訊いてもいないのに言ってくる。

 ひい。
 超能力。

「此処のバーテンダーが美人だと言うので、一時期、小堺が通い詰めていたからな」
とカウンターを指差す。

 なるほど、黒髪ロングヘアのすごい美人が居る。

「結局、子持ちの人妻だったようなんだが。
 指輪してないなんて詐欺だと小堺が泣いていた」

「いやー、でも、今、結婚指輪してない人多いですよ。
 ずっとしてると腰が悪くなるって言うし」

 私も指輪、したことないです、とうっかり言ってしまう。

 こういうことを言っていると、誰も私に指輪とかくれない気が、と気がついたが、遅かった。

 ふーん、と大魔王様は流しているので、どのみち関係なかったか……と思ったとき、大魔王様の携帯が鳴った。