好きになれとは言ってない

 




 まずい……。
 寄り道するなと言われたのに、こんな時間に真尋さんの店のある駅から乗るなんて。

 彼の座っている列は他に人は座っておらず、空いているのに、座れとも言ってくれない。

 大魔王様は、ただこちらを見ておられるだけだ。

 ……なんだろう。
 このこう着状態、と思いながら、遥も固まっていた。

 だが、大魔王様の駅には、すぐに着いてしまう。

 このままじゃ嫌だな、と思い、

「……こ、こんばんは」
と緊迫しているこの状況には不似合いな挨拶をし、少し距離を空けて、近くに座ってみた。

 すると、大魔王様は、更に距離を空けて座り直す。

 ……何故だ。

 遥は思わず、距離をつめて座り直してしまった。

 ところが、大魔王様は更に逃げてしまわれる。

 何故ですかっ。

 何故なんですかっ、大魔王様っ!

 最初にはべれと言ったのは貴方なのにっ。

 これでは、私が襲っていますっ! と思いながら、遥は更に距離をつめ、航を壁際に追いつめる。