好きになれとは言ってない

 



 遥め。
 いまいち楽しくなかったじゃないか、と思いながら、航は空いていたので座れた電車に目を閉じ、乗っていた。

 まだ時間的には早い。

 赤ん坊が居る友人のことを考えて、早めに切り上げたからだ。

 そろそろ真尋の店の駅だな、と思い、目を開けると、遥が乗ってきた。

 こいつ、真尋のところに行ったな、あれだけ言ったのに。

 まあ、俺にこいつを拘束する権利はないんだが、と思っていると、遥は何故か降りようとする。

 何故、逃げる……と目力で語った。

 怯えた顔の遥は、自分の視線に引っ張られる操り人形のようになりながら、再び乗ってきた。

 扉が閉まる。

 遥は席はあちこち空いているのに、何故か戸口に立ったままだった。