好きになれとは言ってない

 そんなことを考えていたら、カウンターに入った真尋が、こちらを見て笑い、
「いらっしゃい。
 なんにする?」
と訊いてきた。

 うわああああっ。
 絵に描いたような美青年って、どんなのだっ、と長年、思ってたが、こんなのだっ、と思った。

 髪、私より、さらさらだしっ。

 住宅街のわかりにくい場所だが、幾らでも女の子が来そうだ。

 だが、やはり、この顔は知っている、と思った。

「こ、古賀遥と申します」
と遥が頭を下げると、航が、

「弟だ」
と言ってきた。

 ……ですよね。

 よく見たら、そっくりですよ、とマジマジと見てしまう。

 受ける印象はかなり違うが。

「でもあの、ほんとに弟さんなんですか?

 顔はそっくりですけど、細いですよ?」
と思わず言ってしまい、真尋に、

「遥ちゃん、筋肉フェチ?」
と笑われる。

「まあ、兄貴と付き合うくらいだからね」

 つっ、付き合ってませんーっ!