好きになれとは言ってない

「自分は呑みに行くのに、真っ直ぐ家に帰れとか言われたら、そりゃグレるよね……」
と呟いていた。

 それを聞き咎めた大葉が、
「あれ?
 もしかして、遥ちゃん?

 遥ちゃんと一緒だった?」
と訊いてくる。

 こういうことに関しては、大魔王様より、遥かに勘のいい人だ。

「姫が階段から降ってきたから、受け止めたら、新海課長の弟さんの店に連れていかれたんですよ」

「なにそのざっくりな説明」

 まあ、わかったけど、と大葉は苦笑いしている。

 隠していても、真尋が航にしゃべるだろうと思って、全部しゃべったのだ。

「小宮、遥ちゃんに手出しちゃ駄目だよ。
 あの堅物の新海にようやく、いや、初めてかな? 訪れた恋なんだから」

「初めてだったら、優先されるってもんじゃないでしょ。
 僕だって、本気になることなんて滅多にないんですから」

「……本気なの?」

「いやー、本気にはなりたくないんですけどねー」
と本音で語ると、

「そうだね。
 やめといた方がいいよ」
と言われる。