好きになれとは言ってない

 



 その後、駅から歩いて会社に戻った小宮は、行ったり来たり莫迦みたいだな、と思っていた。

 こんな手間暇かけて、完全、空振りとか。

 でも、空振りなのに、嫌じゃないと言うか。

 遥とはなにもしなくても、話してるだけで楽しい気がする。

 そんなことを思いながら、駐車場に入ると、誰も居ないと思っていたのに、まだ車があり、人が居た。

「大葉さん」
と言いながら、あ、大魔王様の手下その一、と失礼なことを思ってしまう。

「ああ、小宮か」

 どうやら呑んでいるようだ。

「代行待ちですか?」

「そう。
 小宮もか?」
と問われ、

「いえ、僕は呑んでないんですけど」
と言いかけ、ふと気づいて問うてみた。

「もしかして、新海課長と呑んでたんですか?」

 いつも一緒に居るから、もしかして、と思ったのだ。

「そうそう。
 大学の仲間の出産祝いでね」

 そうか。
 この二人、同じ大学だったのか、と気づく。