好きになれとは言ってない

「どうかしましたか? 小宮さん」
と完全に足を止めたまま、青褪めているこちらの顔を見て心配してくれる。

 第一、後ろに大魔王様の幻が見える……。

 いや、本当に居るわけもないのだが。

 気配というか。

 遥の背後に、筋骨隆々とした腕と胸をむき出しにし、不動明王のような憤怒の表情で、こちらを睨みつけようとしている航の幻が見えた。

 ひい。

「いや、……夜道は気をつけて帰ろうね」

 遥に自分がなにかしても、しなくても、帰り道なにかあっただけで、不動明王様に殺されそうな気がしていた。