好きになれとは言ってない

 




「楽しかったですねー」

 遥と話しながら、小宮は夜道を歩いていた。

 確かに、思いの外、楽しかった。

 真尋と遥と三人で話していただけで、遥とは手も握ってないのに、なんだか楽しくて、浮き立つような心地がしていた。

 こういうのも恋だとか言うのだろうか。

 いやいや、そんな莫迦な。

 遥はそんなこと、なにも考えてはいないようで、相変わらず、ヘラヘラ阿呆な話を続けている。

 そのとき、小宮は足を止めた。

「遥ちゃん、あれ」
と前方を指差す。

 白い猫が路地を抜けた先の道を横切りかけて、足を止め、こちらを見ていた。

 青い月明かりの下、なんだか幻想的だ。

「ほら、いつもちゃんと猫居るんですよ」
とこちらを見上げ勝ち誇る遥が可愛らしく、社内で見るより、百万倍綺麗に見えた。

 どうしよう。
 キスしたい。

 でも、そんなことしたら、逃げ出しそうだし、二度と、会ってくれなさそうだし、第一。

 第一……。