好きになれとは言ってない


 


「なに渋い顔して呑んでんだ?」

 大葉に問われ、航は顔を上げた。

「いや、楽しいが」
と言うと、

「……お前、楽しいがあんまり表情に出ないんだよ」
と言われる。

 今日は大学の仲間の集まりだ。

 会社の友人も悪くないが、やはり、こちらの方が、なんの利害関係もないし、普段の生活と切り離されているせいか、ほっと気の抜けるところもある。

 そんなことを考えていると、子どもが産まれた友人が、酒をつぎに来てくれた。

「祝い、ありがとうな、新海。
 お前、人事課長になったんだって?」

 すごいな、と言われる。

「いや、別にすごくはない。
 ただのリスト……」

「そういや、子どもの名前、なんになったんだっけ?」
と大葉が話を遮る。

 あとで、
「楽しい会で、リストラの話なんぞするな莫迦者」
と言われた。

 まあ、それもそうか、と思ったが、自分の今の役職について、なにも知らずに、すごいね、と言われると申し訳ない気がして、弁解したくなるのだが。

 ……それにしても、遥は真っ直ぐ帰っただろうか。