好きになれとは言ってない

 



 上からなにかが降ってくる。

 階段を上がっていた小宮は、それを見ていた。

 足を踏み外した遥だ。

 うわっ、と声を上げながらも、片手で手すりを持ち、片手で遥のお腹辺りに手をかけ、抱きとめた。

「大丈夫!?」

「す、すみません」
と言いながら、まだ呆然としているのか、遥は自分に抱かれたまま、呟いていた。

「これは一体、何事でしょう……」

 いや、それは僕が聞きたいが、と思っていると、
「どうも足を踏み外したようで。
 すみません。

 ……あっ、すみませんっ」
とようやくそこで気づいたらしく、慌てて離れたが、その弾みで、また、ひっくり返る。

 尾てい骨を階段の角で打ったのか、ぐっ、と低い声を上げたきり、俯いて動かなくなった。

 燃え尽きた人のように、そのまま階段に座り込んでいる。

「……大丈夫?」

 しばらくして返事があった。

「だ、大丈夫じゃないです……」