近い、近いな。

 座れはしたが、それなり混んではいるので、座席はぎゅうぎゅう詰めだ。

 航とも、隣のおじさんとも腰が触れていて、ちょっと困る。

 座れ、と命令してきた航だが、特にこちらに話しかけてくるでもなく、ただ本を読んでいる。

 こうしてると、普通の……

 いや、かなりのイケメンなんだがな、と遥は暇つぶしにその横顔を眺める。

 でも、ちょっとガタイが良すぎるような。

 自衛隊か消防署の人みたいだ。

 事務仕事にはもったいない肩幅だ。

 そんなことを考えていると、ふいに航は集中力を欠いたように本を閉じ、こちらを見た。

「……何故、俺の顔を凝視している」

「いや、暇だったので」

 というか、滅多に間近に見ることのない人なので、物珍しく、眺めてしまったのだ。