好きになれとは言ってない

「そうか。
 今日は無理だな。
 約束があるんだ」

「そうですか。
 すみませんでした。

 真尋さんの店にでも行って帰ります」

 とぼとぼと帰ろうとすると、
「待て」
と言われる。

 はい? と振り返ると、
「真尋の店には行くな。
 真っ直ぐ帰れ」
と言われた。

 何故、そこで理不尽な命令を大魔王様、と思いながら、放心状態のまま、
「じゃ、他の店に行って帰ります」
と振り返り言って帰ろうとしたが、

「駄目だ。
 何処にも寄り道せずに帰れ」
と言ってくる。

 遥は足を止め、さすがに文句を言った。

「なんでですかっ。
 いいじゃないですかっ。

 傷心の私がひととき憩いの場所に行くくらいっ。

 っていうか、貴方はなんの権利があって、私に命令してるんですかっ」

 そう言いながら、ああ、やばい、声が大きくなってきた、とは思っていた。

 もう遅い時間だが、結構人は居るし、通りすがりのおじさんが面白おかしくこちらを見て通っている。