好きになれとは言ってない

 





 詰問されているようだ。

 遥は凍りついたまま、航を見上げていた。

 リストラ寸前の社員が、何故、真面目に働かなかった? と問い詰められている感じだった。

「何故、そんなことを訊く」

「あ……えーと」

 落ちたウロコを拾い上げそうになったが、念にも運にも頼らず、頑張った。

「か、課長。
 課長は、今日は何時に帰るんですか?」

「七時には出るが」

「あ、そ、そうなんですか?」

 ん?
 出るが? と思っていると、案の定、

「今日は、用事があるから」
と言う。

「ご、ご用事があるんですか」

 しょんぼりして言うと、どうかしたのかと問われる。

 ああ、なんでか、オブラートに包んで言わなければ、と思いながら、遥はぼんやりしたまま言っていた。

「課長と一緒に帰りたかったんです」

 ……なにも包めていなかったな、と思っていると、航は、仕事のスケジュールを部下に告げるように言ってくる。