好きになれとは言ってない

「あ、古賀さん。
 新海課長?」
と入り口付近に居た若い部下が笑いながら遥に言っていた。

「えっ。
 課長ってわけじゃないんですけどっ」
と言ったあとで、

「……課長はまだいらっしゃいますか?」
と訊いている。

「居るよ、ほら」
と部下が手で、こちらを示した。

 だが、目が合った途端、遥は隠れた。

「いえ、いらっしゃるんならいいです。
 それでは~」

 何故、帰る遥っ!

 俺に大事な話があるんじゃないのかっ。

 つい、立ち上がっていた。

 そのまま遥を追って出る。

 廊下には、もう帰り支度を済ませているらしく、鞄を抱えた遥が居た。

「は……、古賀遥」

 遥と呼びかけ、言い換える。

 誰が聞いているかわからないからだ。

「なにか俺に用があるんじゃないのか」