好きになれとは言ってない

 



 何故っ?
 亜紀さんが課長をガン見しているっ。

 遥は仕事の手もおろそかになりながら、そちらを窺っていた。

 総務に用があったらしい航が来て、部長と話をしているのだが、何故か亜紀がその背を見つめている。

 わ、私が課長の話をし過ぎたせいで、亜紀さんも課長を好きになったとかっ?
と遥は、じゃあ、あんた、私が小宮の話をしたら、小宮を好きになるの、と言い返されそうなことを思っていた。

 航が総務を出て行くとき、何故か亜紀も席を立つ。

 なっ、なになになにーっ!
と思ったが、一緒に立つのもなんだかなと思い、視線だけでそちらを窺っていた。

 通りすがりのおじさんが、
「おっ、古賀さん。
 打つの速いねえ」
と言ってきた。

 どうやら勢いに任せて打っていたようだ。

 確認し直さなければと思いながらも、二人の出て行った廊下が気になる。