好きになれとは言ってない

「いや、誰もないですよ。
 好きでもないのに、付き合ったりするわけないじゃないですか」
と言うと、

「ピュアだね、遥ちゃん。
 女の子でも、興味本位だったり、彼氏居ないと格好悪いからって理由で付き合ったりするでしょ」
と感心したように言われた。

「別に彼氏居なくても、格好悪くないです。
 これはこれで毎日楽しいので困りません」

「ほんと面白いね、遥ちゃんは」

 まあ、じゃあ、男心もわからないか、と言われる。

「課長だって、遥ちゃんのこと意識してるかもしれないけど、あの人、あんまり顔に出さない人だからね。

 本当は今、遥ちゃんと同じくらい動揺してたかもしれないよ」

 いや、そんなこともないと思うが、と思う。

 今日は酔ってもいないようだし。

 正気のときとは、別人だからな、と思った。

 ……酔ったときだけ付き合うというのはどうだろう。

 酔っているときに、婚姻届を出しに行って、酔っているときだけ夫婦だとか。

 ああ、妄想の方向性がおかしい、と思っていると、小宮が、
「課長に告白しちゃえばいいじゃん」
と軽く言ってくる。