好きになれとは言ってない

 




 降りたことのない駅だった。

 大魔王様が降りる駅とは違うようだが、と思いながらついていく。

 どうでもいいが、足速いな、この人。

 普通に歩いてるように見えるのに。

 歩幅が違うのだろうか。

 足の長さか。

 うーむ。
 不愉快なり。

 などと考えながら、歩いているうちに、昔ながらの商店街を通り、閑静な住宅街へと出た。

 落ち着いた雰囲気の町だ。

 来たこともないのに、懐かしい感じがする、と今来た道を一瞬振り返った隙に、大魔王様は消えていた。

 ええーっ。
 なんでーっ!?

 遥は慌てて辺りを見回す。

 もう遅い時間だ。

 後ろの商店街も開いておらず、人気がない。

 大魔王様っ、何処ですかっ。

 しかも、道を覚えていなかったので、駅へ戻ることもできない。

 ど、どうしよう、と思ったとき、誰かが腕をつかんだ。