好きになれとは言ってない

 




「もう京都に行こうかと思います」

 翌日の夜、真尋の店のカウンターで、そう唐突に呟いた遥に、はあ? と真尋が返してきた。

 行きは普段通りに乗ったのだが、帰りはやはり、遅めにずらしてみた。

 だが、結局、航とは一緒に乗れなかった。

 まあ、当たり前か。

 あれだけ走ってる電車の中で、一緒に乗れる確率なんて、といじける。

 インコのまどかさんは毎日、あの部屋で課長と過ごしていたのだろうに、私は結界があるかのように課長に近づけない。

 おのれ、まどかさんめ。

 遥の中では、最早、まどかさんは、航の元カノくらいのポジションだった。

「なんで、京都」
と言われたので、例の番組の話をすると、真尋は笑い、

「人間って、上手くいかなくなると、スピリチュアルなものに頼るよね」
と言ってきた。

「真尋さんはそんなことなさそうですね」
と言うと、

「だって、そんなことするより……」
と言いかけた真尋は何故かやめた。

「そうだ。
 兄貴、昨日、ニンジン食べてたよ」
と言ってくる。