好きになれとは言ってない

「……辞めてもいいかも」

 きゃーっ、と先輩女子たちが騒ぎ出す。

 大魔王様、嫌いなんじゃなかったんですか、皆さん、と思いながら、遥は黙って定食を食べていた。

 航たちは離れた席に座ったようだ。

 あちらも盛り上がっているから、同じようにコンパの話をしているのかもしれない。

 いや、盛り上がっているのは、航以外だが。

 だが、珍しく、通りすがりに、他の男性社員が航に話しかけたりしていて。

 なんとなく、ほっとしながら、遥はそれを眺めていた。