『逃げられたら、余程自信のある男でない限り、俺のこと嫌いなのかなとか思っちゃうと思うけどね』

 そう……

 そうなのでしょうか、と思いながら、遥は意味もなく部屋の中を歩き回り始めた。

 なんで逃げたって。

 ……なんででしょうね。

 そう思ったとき、自分に触れてきた航を思い出していた。

 思わず手近にあったカーテンを握り締め、ねじ切りそうになる。

 嫌……ではなかった気がするんだけど。

 どう、……どうなんだろうな、と今度は自分自身に向かい、問いかける。

 思い出すのも、そのことについて考えるのもなんだか恥ずかしい。

 答えはすぐには出そうにもなかった。