「あーきーちゃん!トリックオアトリート!」


「先輩……ちょっと待ってください。」


「………………もういい?」


「今、日誌書いてるんで。」


「うー……」



冷たく言い放つと

しゅーん

と先輩は大人しくなった。


眉毛を下げて目を潤ませる先輩はまるで捨てられた子犬のよう。


ああ、この顔に弱いんだよなあ


でも日誌書き終わらせないと。
甘やかしちゃダメだ。


「そんな顔してもダメですからね。」




日誌に向き直るも気になって集中できない。


もう一度チラッと先輩を見ると、

今度は上目遣いにまっすぐな瞳。


ええいダメダメ。

首をブンブン振る。



「あきちゃん」



急に低音になった先輩の声におもわず振り返った。


すると

チュ


「え……」

目の前には狼に豹変した先輩。


「イタズラしてもいいってことだよね。」

「え、ちがっ……」

「無理。待てない。」






「あきちゃん、かーわいい。」