ーーー龍翔side
「あの、嘉代先生。」
「何だ?」
「コンクールに出したい写真を持ってきました。見ていただけますか?」
「あぁ、見せてみろ。」
「……これです。」
ドクン、ドクン、ドクン……
パラ、パラ、パラ……
「''心のままに''撮ったな。」
「え?」
「この娘のことが大切だ、……大好きだって気持ちが溢れてる。……いい写真だ。」
「っ!?あ、ありがとうございます!!」
なんか、恥ずかしい……けど、嬉しい。
「この写真がいちばん綺麗だ。」
それは、紗羽がジャンプを成功させて笑った瞬間。
「けど、これは上條の宝物にしなさい。」
「え?どういう意味ですか?」
「……写真家にとって誰にも見せたくない写真っていうのがある。
それがたとえ、どれだけうまく撮れたと思っていても。
たぶん、そう思った写真が、人生で最も輝いた瞬間なんだ。」
「じゃあ、嘉代先生の人生で最も輝いた瞬間は、誰にも見せてないんですか?」
「あぁ、そうだ。……上條、お前はこの写真を誰かに見られてもいいのか?」
……。
なんか、胸がざわざわする。
「なんか、嫌です。」
「なら、出すな。そうだな、出すならこの写真だな。」