「あの、上條くんはいつから写真を撮ってるの?」
「龍翔でいいぜ。
俺が写真を始めたのは、小学生の頃。
まぁ、サッカーしてて本格的に始めたのは、最近だよ。」
「え?サッカー?」
「あー、俺交通事故で下半身不随になっちまったんだよ。
その前までバリバリサッカーやってたぜ。」
「サッカーか……。
やってみたいなぁー、なんちゃって(笑)」
一瞬、悲しい顔をしたのを俺は見逃さなかった。
「誤魔化すなよ。
やりたいならやりたいって言ってもいいだろう。
口に出すだけでも罪なのか?」
なんかかっこつけすぎたか?
「……。龍翔は、優しいんだね。
俺、いつもやりたいことを我慢してた。
本当はもっとやりたいことがあるんだ。」
俺だってやりたいことがいっぱいあるんだ。
健常者だってそうだろう。
「俺、4歳の時に骨肉腫っていう骨のガンになったんだ。
それができたのは、右脚。
もう手術で足を切断するしかなくて……。
でも、切断したら生きられると思って切った。
けど、神様はイジワルだった。
その一年後、肺にガンが見つかった。」
思いもよらなかった。
俺に笑いかけてくれる健人が、こんなにも壮絶な人生を送ってたなんて。
……でも、不思議と同情の気持ちは無かった。
反対に憧れた。
どんなに辛いことがあっても前を見て、笑える健人を強いと思った。
「また、手術して何とか助かった。
けど、手術の繰り返しで義足を買うお金無くなっちゃって。
それに子供の間は、すぐに成長して義足を買ってもすぐ合わなくなるだろうから、大人になるまで貯金して買おうってなったんだ。」
「健人は、強いな。」
「えっへん!!……って、そんなことより早く写真撮っちゃお!!」
「あぁ。」
それから俺達は、シャッターを押し続けた。