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コンコンコン

「はい、どうぞー。」

「龍ちゃん、はいこれ。頼まれてたマンガ。」

「お、ありがとー!!」

龍ちゃんは、そう言うとマンガをベッドの横に置いた。

いつもならすぐに読むのに……。

「今日は、紗羽だけ?」

「優羽は、最近練習サボって呼び出されてる。」

「優羽らしいな。」

なんかいつもの龍ちゃんと違う気がする。

どこか落ち着いてる。まるで大人になったみたいに。

「紗羽、聞いてほしいことがあるんだ。」

「うん……。」

「俺、あの学校辞めるわ。」

「え……?」

一瞬、時間が止まった気がした。

「辞めて、障害者学校に通うことにした。」

「何で!?障害者って……。」

龍ちゃんは、障害者なんかじゃない!!

「紗羽、俺は障害者になったんだ。」

「っ……!」

……龍ちゃんは、受け入れたんだ、自分の運命を。

「このままあの学校通っても、みんなに迷惑かけるだけだ。」

それでも私は、

「迷惑なんかじゃないよ!!私は、龍ちゃんと一緒に卒業したいよ!!」

「紗羽、ありがとう。そう思ってくれて。」

そう言う龍ちゃんの顔は、どこか晴れ晴れしていて、勇ましかった。

……龍ちゃんの意志は、変わらない。

「……わかった。ごめんね?
わがまま言って。」

「ううん。それで俺、もう1回写真やろうと思うんだ。」

「写真……?そう言えば、昔やってたね。」

「実は、これから通おうとしてる学校の写真部の顧問の人が、有名な写真家らしいんだ。
その人も、障害者らしい。
俺、その人から写真学びたいんだ。」

「そうだったんだ。
龍ちゃんの新しい夢なんだね、写真は。」

「夢かはわかんねぇけど、今の俺にとって新しい光の一つかな。」

龍ちゃんは、運命を受け入れて前に進もうとしてるんだ。

私にそれを止める権利なんてない。

「うん!いってらっしゃい!!」